キックオフミーティングなどなどを通してギター工場の工場長と交流を深めたガコッパーのオーナーですが、
ギターのボデイを切り抜いたあとの木材は廃棄されるのみであることを知ってしまいます。
世界中から集まるめちゃくちゃ良い材なのに、たった何ミリかズレただけでギターになることなく捨てられていく……。
たまに学校の木工の授業やスキー教室の薪にされることはあっても、それ以外で有効活用はできないのか……。
これを再利用する方法をあれこれ思案します。
そこでできあがったのが、スピーカー。
不在の鳴らす音。もはや哲学的ですらあります。
スピーカーとはそもそも空っぽの箱という大きな不在がなくてはならない構造なわけですが、ギターに成り得た材の不在を抱える「残り物」のギター枠が、不在という点においてそれと共鳴しています。
不在なくして良い音は鳴らないのです。
そんなことはどうでもいいのですが、このスピーカー、なかなかいい音がします。
ストライプ柄がおしゃれですが、
これは異なる種類のギター材を貼りあわせているからです。
このスピーカーには、ギター廃材だけでなく、西興部産のいろいろなものが見え隠れしながら詰まっています。
スピーカーの内側には、エゾシカの毛皮が吸音材として貼られていたり、
スピーカー側面のギターの形に抜かれた穴を埋めるのは、
西興部を流れる興部川から浚ってきた砂を混ぜて作ったセメントだったり、
ケーブルジャックはストラトキャスターのジャックを踏襲していたり。
ユニットもわざわざアメリカから取り寄せたこだわりの品らしいです。
録音企画の本筋からは逸れましたが、これもまた西興部で生まれた音のひとつです。