2020年10月
地域が元気になるようなイベントをこの村でやりたい!と思い立ち、お手伝いいただきたいと思った村の人たちを集めてワークショップを行いました。
この時点ではどんな企画を打つか、まだなにも決まっていませんでした。
決まった目標に向けて人々を巻き込んでゆくよりも、参加してくれた人たちがそれぞれどのようにこの地域を見ているかを言い合ってみたときに、今までは気付かなかったおもしろい発見があるのではないか、そういう小さな(再)発見こそが新しく企画を立ち上げるのには必要なのではないかと考えました。
場所は西興部ゲストハウスGA.KOPPER。このさきずっとお世話になる場所、みんなのよりどころです。
目指したのは、「これまで出会わなかったひとたちを出会わせること」。
人口約1,000人のとても小さな村ですが、人間関係は固定していて、ふだん出会わない人たちとはよほどのことがないかぎり交流することがないのが実情です。
この日集まってくれた方たちも、ふだんなんとなくは知っているけどちゃんと話したことはなさそうというメンバーをあえて選びました。
集まってくれたのは、新規就農した酪農家、ギター工場の工場長、中学校の先生、役場の若手、Iターン起業家、福祉施設職員などなど。
このメンバーがこのあともずっと関わってくれることはなかったとしても、何かおもしろいこと、少なくともおもしろそうだと自分たちが思えることを話し合うことがまずはこの企画を立ち上げるにあたってやりたかったことです。
さらに、企画立ち上げから実施までを縦軸と考えて、企画の運営それ自体を企画の目的とすることで、一過性の社交を回避して、新しく交流を生み出しつづけられると考えました。
たった一度のイベントにたくさんの人を集めるより、少ない人数でも強いチームを動かしつづけることの方が、地域づくりには大事だと考えたのです。
だから、あえて、地域おこし協力隊の参加は少なくしました。
協力隊が協力するのは当然のことであって、そうではない、ふだん出会うことのなかった人たちが協力して新しい関係を作っていくことに意味があると考えたからです。
たくさんのアイディアが生まれました。
旧名寄本線時代の駅弁再現、鹿肉や熊肉を使ったイベント、村のおばあちゃんたちの流し団子、酪農家さんのとこのベトナム人技能実習生の作るフォーを食べる会などなど。
ワークショップはコロナ禍ではありつつも2回実施することができました。
ここで生まれたアイディアをまとめた結果、ガコッパーを使った野外イベントを実施することを年末ごろまでは目指していました。
ところが、思った以上に感染症拡大が収まらず、野外イベントの開催は断念せざるを得ませんでした。
それでも諦めるわけにはいかなかったので、野外イベントとしてまとめようとしていた内容を「音」と「食」というふたつの視点から切り分けることにしました。
「食」の方は西興部村の土地のものを土地の人たち自身が食べる機会として目的を洗練しました。
ただ、これもワークショップの意図とはズレていなくて、結局のところ「村の人も意外と村のこと知らないから村のこと知る機会を作ろう」という趣旨が一貫しています。
「食」企画はやがてテイクアウトイベントとして結実します(メディア掲載はこちらやこちら)。
「音」企画がこのサイトで扱う「きっと、はじまりの季節」録音事業です。
「音」の方はというと、こちらは、「コロナだろうがなんだろうが構わずやれて、なおかつ村のポテンシャルが引き出せて、さらにいうとヨソではやってないおもしろい取組み」がコンセプトになっています。
コロナに振り回されない、というとすぐにリモートで何かやるということになりますが、リモートなんちゃらというのは世の中ではやりつくされており特におもしろみを感じなかったので、単純なリモートは避けました。
そこで、それぞれの地点の音をつなぎ合わせて音を作っていくという(これも縦軸です)企画にしました。
それぞれの場所でできる限りのことをして、それを次の場所につないでいくことで、場所と時間を跨ぎながらモノづくりができるし、そこに新しいおもしろさがあると考えました。
でも考えてみればモノづくりはそもそもそういうものでした。何十年か生きてきた木を一瞬にして切り倒して何かに作りかえることは、その場限りのできごとでは全くなくて、長い時間のなかにあった何かを終わらせてまた何かを始めることですね。
音を作るのも、楽器の練習があって、レコーディングエンジニアがいて、録音の緊張感があって、音が混ざって、妥協や満足にじりじりしながらステレオになるという長い時間のかかることです。
それをやりたかった、という気持ちに尽きます。
それに、この地域で出会った人たちならきっと一緒におもしろがってくれるだろうなと思いました。
だから、この企画がはじまりました。